2024年度より日本がん免疫学会理事長を拝命いたしました池田裕明でございます。一言ご挨拶を申し上げます。
日本がん免疫学会(Japanese Association of Cancer Immunology: JACI)は、腫瘍免疫学を研究する基礎・臨床の研究者・医師に最新の情報と討論の場を提供し、科学的ながん免疫療法の開発を促進し、国際的に高く評価される研究を生み出す基盤形成を目的として、2009年に設立されました。本学会の前身は、1996年に発足した基盤的癌免疫研究会(Society for Fundamental Cancer Immunology: SFCI)にあります。
基盤的癌免疫研究会が立ち上げられた頃、私は大学院生でしたが、その活気あるアカデミックな議論、がん免疫療法を人々の役に立つものにするのだという熱意、学会員の方々の濃密な関係性に魅了されました。基盤的癌免疫研究会が何故「基盤的」という言葉をわざわざ使ったのでしょうか。そこには科学的真理を追い求めることの重要性が強調されています。現在の日本がん免疫学会の課題と今後果たすべき役割を考えた時に、私は基盤的癌免疫研究会の「初心」を思い起こすことが重要だと考えます。
近年、がん免疫療法は長年の研究成果が実り、遂に実用化される時代に突入しています。臨床の場で多くの患者様にその成果を還元することが可能になってきました。基盤的癌免疫研究会設立当時を振り返りますとまさに夢のような隔世の感があります。研究者・医師として有難い状況であると共に、重い責任が生じています。一方で、がん免疫療法の恩恵が得られる患者様はまだ一部に留まり、さらなる研究開発が必要です。がんの予防・診断・治療における社会貢献を目指して、今後ますます急速に変化する世界の研究に日本がん疫学会が十分な役割を果たさなければいけません。
私は、日本がん免疫学会のこれからの目標は、「学会員の研究力の向上」に集約されると考えます。「学会員の研究力の向上」を目指して、以下の課題に取り組みたいと思います。
- 若手研究者の育成
- 国際的連携の強化
- 周辺分野・異分野への参画、協調
- 男女共同参画
- 産官学連携の強化
基盤的癌免疫研究会を立ち上げた私達の先達の「初心」を思い起こし、日本がん免疫学会を科学的真理を追い求める人達の知性を刺激する場とし、若い研究者・医師の期待と憧れを受け止め得る場とし、世界のがん免疫研究者との交流の場とし、がん患者様に福音を届ける架け橋となるように、会員の皆様、日本がん免疫学会を支えて下さる皆様と共にこの学会を築き上げてゆきたいと思います。
2024年7月
日本がん免疫学会 理事長
長崎大学 医学部医学科 大学院医歯薬学総合研究科 腫瘍医学分野
池田 裕明