細胞免疫・制御性T細胞
制御性T細胞(Treg)とは、免疫抑制細胞の一つで、健常人の末梢血にあるCD4+T細胞のうち個人差はありますが概ね5%程度含まれています。主に免疫が自分の体を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の発症を防ぐために、自己に対する免疫応答を抑制(免疫寛容)する役割を持つ細胞として研究が進められてきました。近年、制御性T細胞が、がんに対する免疫応答においてエフェクターT細胞の作用を低下させることなどによって、がんが免疫系からの攻撃を回避する役割を持つことが明らかになり注目を集めるようになりました。特に活性化して免疫抑制機能が強くなった制御性T細胞(eTreg)が、いくつかの種類のがんの中の微小環境ではCD4+T細胞中の割合が数十%まで増加しており、これががんに対する免疫応答を低下させてしまっていることがわかってきました。このため、近年、後で述べる免疫チェックポイント阻害剤に加えて、制御性T細胞をはじめとする免疫抑制に働いている細胞を除去することや、これらの細胞の免疫抑制作用を弱めるような作用を持つ薬剤を併用投与することで、エフェクターT細胞に対する免疫抑制作用を解除し、がん免疫療法の治療効果を高めることができるかを検証する臨床試験が積極的に行われております。