日本がん免疫学会利益相反規程

第1節 定義

第1条 本会会員が、医学系研究を実施するに当たって、産学連携による研究をなす場合には、学術的・倫理的責任を果たすことによって得られる成果の社会への還元(公的利益)だけでなく、産学連携に伴って取得する金銭・地位・利権等(私的利益)が発生する場合がある。この様な直接的な産学連携による研究での関係に留まらず、現在では、企業・営利を目的とする団体から、当該研究者へ提供される金銭等の経済的な利益やその他関連する利益は、企業・営利団体が後援する教育講演に際しての謝金や、企業・営利団体が後援し宣伝活動に利用されている雑誌への記事掲載に際しての原稿料等、その形態は多様化している。この様な時代背景を考慮し、本会では、このこれらの状況が研究者個人の中に生じる、公的利益のための社会的責務と、直接・間接を問わず、企業・営利団体との関わりにおいて生じる私的利益との衝突・相反、具体的にはスポンサーへの忖度が生じる可能性がある状態を利益相反(conflict of interest: COI)と定義する。

本学会学術集会及び本学会が支援する講演会等の関連事業における発表に際して、COI情報である利益相反の状態にあるスポンサーとの経済的関係を適切に開示することにより、社会に対する説明責任を果たすことを目的とする。

第2節 学会学術集会等における利益相反事項の申告と開示

第2条 筆頭発表者及び責任研究者(非学会員を含む)は、本会が主催する学術集会、シンポジウム等で発表・講演を行う場合、本規程第3条に定める事項に関して、演題登録時から遡って過去3年間における発表演題に関連する企業との利益相反状態の有無を、発表・講演時にこれを開示する。

第3条 自己申告が必要な事項と申告基準額は、以下の通りとする。
(1)企業や営利を目的とした団体(以下、企業等)の役員、顧問職については、一つの企業等からの報酬額が年間100万円以上はこれを申告する。
(2)株式・新株予約権等の保有については、 一つの企業等についての1年間の株式による利益(配当、売却益、含み益の総和)が100万円以上の場合、あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合はこれを申告する。
(3)企業等からの特許権使用料・譲渡益については、一つの特許権使用料・譲渡益が年間100万円以上の場合はこれを申告する。
(4)企業等から、会議の出席(講演、座長等)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた講演料・謝金等については、一つの企業等から年間合計50万円以上の場合はこれを申告する。
(5)企業等がパンフレット等の執筆に対して支払った原稿料については、一つの企業等からの年間の原稿料が合計50万円以上の場合はこれを申告する。
(6)企業等および企業等を資金源とする非営利団体が提供する研究費(受託研究費、共同研究費、治験費、奨学寄付金、委任経理金等)及び寄付講座について、一つの企業等および企業等を資金源とする非営利団体から申告者に対して支払われた直接経費の総額が年間100万円以上の場合は申告する。奨学(奨励)寄付金については、一つの企業・組織や団体から、申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた直接経費の総額が年間100万円以上の場合とする。申告者が本項に定める企業や組織から個人的に受け取っている対価がある場合には別途申告する。
(7)企業等が提供する寄付講座に申告者が所属している場合はこれを申告する。申告者が研究室の代表であり企業等から研究員等を派遣・提供されている場合、雇用費の受け入れの有無に拘わらずこれを申告する。
(8)その他の報酬(研究とは直接無関係な、旅行、贈答品等)については、一つの企業・団体から受けた報酬が年間5万円以上の場合は申告する。

第3節 役員等の利益相反事項の申告と開示

第4条 本会役員(理事・監事)、学術集会会長・副会長、倫理・利益相反委員会委員ならびに出版委員会委員長は、本規程第3条に定める申告をなす。「役員の利益相反自己申告書」(様式1)にもとづき、就任時にこれを理事長に提出する。様式1にて申告する利益相反状態は、本規程第3条記載の申告が必要な事項、及び申告基準額と同一とする。また、就任時から遡って過去3年間分を記入し、その期間を明示する。申告内容は、学会が行う事業に関連する企業や営利を目的とする団体に関わるものに限定する。在任中に利益相反事項に変更が生じたときは、すみやかに様式1にもとづき申告する。

第4節 利益相反事項の取り扱い

第5条 本会に提出された利益相反申告書は、理事長を管理責任者とし、学会事務局または委託管理機関内において、個人情報として厳重に保管・管理する。役員及び委員の任期を終了した者、又は委嘱の撤回あるいは辞任が確定した者等に関する利益相反申告書は、最終の任期満了等その職を辞した日から2年経過したときに、管理責任者の監督下において削除・廃棄される。但し、理事会が削除・廃棄することが適当でないと認めた場合には、当該申告者の利益相反申告書の削除・廃棄を保留できるものとする。学術集会会長、副会長に関する利益相反申告書に関しても学会役員の場合と同様の扱いとする。

2 利益相反内容は、本会の役員・関係役職者・関係機関役職者に対し、当該個人と本会の活動との間における利益相反の有無・程度を判断の上、管理責任者の書面による許可のもとに、本規程に従い、随時開示することができるものとする。開示は、利用目的に必要な限度を超えてはならず、また、開示が必要とされる者に対してのみ開示する。

3 利益相反内容は、原則として非公開とするが、必要があるときは、理事会の議を経て、必要な範囲で本会の内外に開示若しくは公開することが可能である。この場合、利益相反内容が開示若しくは公開される当事者は、理事会に対して、事前に意見を述べることができる。

第5節 倫理・利益相反委員会

第6条 理事会が指名する理事若干名、評議員若干名により、倫理・利益相反委員会を構成する。委員長は理事長が指名する。倫理・利益相反委員会は、理事会との連携にて、本規程に定めるところにより、本会におけるCOIに関わる事項を取り扱う。

第6節 申告違反への措置

第7条 第4条の申告義務のある者が、利益相反申告書を提出しない場合、あるいは虚偽の申告書を提出した場合、理事会は、別に定める懲戒規程にもとづき処分することができる。

2 学術集会等の発表予定者が提出した利益相反自己申告事項について、疑義もしくは社会的・道義的問題が発生した場合、理事会は、倫理・利益相反委員会に対し、学会として社会的説明責任を果たすため、その問題に関して事実関係の調査と審議を行い、答申するよう諮問する。理事会は、倫理・利益相反委員会からの答申にもとづき、措置内容について決定する。理事会は、深刻な利益相反状態が見込まれ、かつ説明責任が果たせない虞がある場合には、緊急の措置として、当該発表予定者の学会発表や論文発表の差止め等の措置を講じることができる。

3 倫理・利益相反委員会が、役員、学術集会会長、副会長及び本規程において利益相反情報の自己申告が定められている委員等のなした利益相反申告内容に疑義が有ることを指摘した場合、同委員会委員長は理事長に対し、文書をもって報告し、理事会は、役員及び委員の委嘱撤回等を含めた適切な措置を取ることができる。

第7節 措置に対する不服申し立て

第8条 審査請求と審査手続は以下のとおりとする。第8条の措置に対して不服のある者は、理事会議決の結果の通知を受けてから7日以内に、理事長宛てに審査請求の申立てをすることができる。審査請求書には、理事会が文書で示した措置に対する具体的な反論・反対意見を、簡潔に記載するものとする。その場合、理事長に開示した情報に加えて、異議理由の根拠となる関連情報を文書で示すことができる。
審査手続
(1) 理事長は審査請求を受けた場合、速やかに利益相反問題管理委員会(以下、管理委員会という)を設置しなければならない。管理委員会は理事長が指名する理事若干名、評議員若干名および外部委員1名以上により構成され、委員長は理事長が指名する。倫理・利益相反委員会委員は管理委員会委員を兼ねることはできない。管理委員長は、審査請求書を受領してから30日以内に管理委員会を開催し、その審査を行う。 
(2) 管理委員会は、当該審査請求にかかる倫理・利益相反委員会・委員長、並びに審査請求者から、直接意見を聞くものとする。但し、定められた意見聴取の期日に出頭しない場合は、その限りではない。
(3) 管理委員会は、特別の事情がない限り、審査に関する第1回の委員会開催日から2ヶ月以内に審査請求に対する答申書をまとめ、理事長に提出し、理事会でその処分又はその取消を決定する。

第8節 本規程の変更

第9条 本規程は原則として、数年ごとに見直しを行うこととし、倫理・利益相反委員会で本規程の見直しのための審議を行い、理事会の承認を得るものとする。

附則

1 本規程は、令和4年1月4日から施行する。
2 本規程施行のときに既に役員に就任している者については、本規程を準用して速やかに所要の報告等を行わせるものとする。