研究会趣旨・概要

研究会概要/Society outline

 日本がん免疫学会(Japanese Association of Cancer Immunology: JACI)は、腫瘍免疫学を研究する基礎・臨床の医師・研究者に最新の情報と討論の場を提供し、科学的ながん免疫療法の開発を促進し、国際的に高く評価される研究をうみだす基盤形成を目的として、2009年に設立されました。本学会の前身は、1996年に発足した基盤的癌免疫研究会にあります。
  がん免疫療法は、さまざまながん種において外科的療法、化学療法、放射線療法に次ぐ第4の標準治療法となりました。しかし、免疫療法に抵抗性のがんは全体の半数以上を占めており、抵抗性のメカニズムや効果予測バイオマーカーなど、解決しなければならない課題は山積しています。そのため、基礎研究のさらなる発展と次世代の免疫療法に向けたトランスレーショナルリサーチの重要性が増しております。近年、シングルセルRNA解析やマススペクトル解析のような分子解析技術の進歩によって、臨床検体を用いた精密な分子免疫学的解析が可能となり、臨床研究において多くのブレイクスルーをもたらしつつあります。がん免疫治療のモダリティーとしても、抗体薬物複合体(ADC)、mRNAワクチン、遺伝子改変T細胞など、State-of-the-artな新技術が生み出されています。そのような背景のもと、本学会は次世代の免疫療法に向けた新技術の開発と科学的根拠に基づいた創薬研究を促進するために、基礎研究者と臨床研究者が一堂に会する場を提供し、アカデミアと企業研究者に交流の場を提供し、腫瘍免疫学研究の学術的基盤形成をミッションとしております。
 本学会の会員数は約560名(2022年1月現在)で、基礎研究者、臨床医から学生まで、大学等の研究機関、病院勤務医、企業研究者を含めた幅広い層により構成されています。意志決定組織は理事15名と評議員から構成され、将来構想委員会、国際連携委員会、学術委員会、若手育成委員会、産官学連携委員会、広報委員会、倫理・利益相反委員会の7つの委員会を組織して活動しております。
   本学会は年1回の学術総会を開催しておりますが、近年はトランスレーショナルリサーチのさらなる発展を目指して、日本バイオセラピイ学会との共催シンポジウムを開催しており、2024年度には両学会の合同学術総会を開催する計画です。また、国際連携を拡充するため、2023年度には第1回JACI-SITC合同国際シンポジウムを計画しております。最新研究成果を社会に還元することも重要なミッションであり、2022年度には第1回市民公開講座を札幌において開催しました。
 本学会は日本における腫瘍免疫学基礎研究とがん免疫療法開発研究を支え、日本の医学研究の一つの方向性を決める重要な学術団体であると自負するとともに、重大な責任を負っていると考えております。本学会のミッションにご賛同いただける研究者および臨床医の皆様におかれましては、是非とも会員として学会の発展にご尽力を賜りたく、お願い申し上げます。
2023年1月吉日
日本がん免疫学会理事長