腫瘍免疫研究におけるSFCIの役割


愛知県がんセンター研究所
所長   高 橋 利 忠


 この7月18日、19日の2日間に亘り、第5回SFCI総会が珠玖洋総会会長の下に津で開催され、活発な発表が多く、実り多き研究会であった。本総会で来年4月からの新役員組織の提案があり、橋本嘉幸、浜岡利之先生に次いで、力不足は承知の上、会長をお引き受けすることとなった。また発足以来、伊東恭悟先生が多大なエネルギーを費やし、整備して来られた事務局を河上裕先生に、また会計幹事も同時に担当していただき、残りの役員は副会長に今井浩三先生、学術幹事に珠玖先生、総務幹事に伊東先生をお願いした。本研究会も徐々に若返りが必要であり、このような組織となった。

 1994年にシンポジウムメCancer VaccinesモがOld博士の下にNew Yorkで開催され、オーガナイザーをつとめておられた橋本、珠玖両先生らとともに出席したが、落ち着いた会で、その内容の確かさに大きな感銘を受けた。それ以後、橋本先生から日本でも腫瘍免疫を討議できる研究会の必要性に関するお話を時々伺うようになった。文部省がん特時代の仙台での橋本班・班会議がイメージとして浮かんだが、いずれにしても他の学会、研究会とは異なる役割を果たす会にしなければと考えた。その後、浜岡先生ら幹事会の先生方と数回に亘り討議し、現在のSFCIの様な研究会となった(橋本嘉幸, News Letter Vol.1, p2, 1997)。発足以来、腫瘍免疫学の進展を背景にし、SFCIも年々充実してきており、日本での腫瘍免疫学研究者の多くが出席するようになった。この数年討論されてきた重要な課題の1つは、探索的医療を行う基盤が日本では極めて乏しいため、ペプチドワクチン等の患者レベルでの研究を開始することが困難であるという問題であった。しかしこのバリアーを少しづつ越え、臨床研究が始められているという事実は本研究会の成果の1つとも考えられる。しかし、メラノーマという腫瘍免疫にとっては格好な標的腫瘍を主とした欧米の研究に比べると、日本での情報量は残念ながら極めて少ないというのが現状である。日本人患者のための腫瘍免疫研究を短期間に推進するためには、目前の論文発表のみにとらわれず、当面、強力な共同研究を施行し、基本的な知識と技術を日本レベルで共用していく必要があると考える。一方、研究における独創性は極めて重要であり、欧米の研究を追い越すためには日本独自の発想法に基づいた研究が推奨されるべきであり、特に若い研究者の方々に大いに期待している。本研究会は、このような研究を推進するためのインターネットの役割を果たしていくとともに、日本の腫瘍免疫研究の情報発信基地としての役割を果たすべきであると考えており、今後とも会員の先生方の活発な研究活動をお願いしたい。