第4回SFCI総会に参加して

札幌医科大学眼科学 第一病理/前田亜希子


  眼科は臨床科のなかでも癌という疾患を身近に感じることが比較的少ない科で癌治療へのアプローチに関する知識は私にとっては大学卒業以来全く進歩のないものでした。私は学生時代、癌への積極的な治療というよりはむしろ緩和医療への関心が強く、私を含めた身近な人にどのような死を選択させてあげるか、どのようにできたらその人らしく最期の時を迎えることができるのだろうかということを考えていました。今思えば、私が受けたい、そして受けさせてあげたい治療は免疫療法ではなかったのかと感じます。今まで免疫療法のことはほとんど知らず、知っていたことといえば、充実した生活を送ることができれば、体内の免疫が上手く働き良好な予後をもたらしてくれるというくらいなものでした。私は癌関連網膜症という疾患に出会い、網膜変性の機序を研究するうちに、この癌関連網膜症患者の癌としての予後が良好であるということに大変興味をもち、癌免疫に関する研究を志しました。そして多くの癌抗原が同定され、実際に治療に応用しようと努力されている多くの先生がいることを知りました。日本人も癌免疫療法のために貢献していることを知りました。本学会では癌免疫の分野で活躍されている先生の講演を実際に拝聴でき、また、日本でも既に患者への応用がなされていること、さらに治療効果があることを知り、今後の癌治療が確実に変わっていくだろうということを実感しました。癌を免疫学的に排除したいという熱意をもった、基礎、臨床の先生方がこんなにも多くいるということがとても印象的でした。癌免疫の詳細が徐々に明らかにされつつあり、眼科研修中の数年の間にも、もうすでに、日本でも癌治療に応用されているところまできているということに感銘を受けました。少なくとも、緩和医療、そしてそのひとつ前のステップにこの免疫療法が近い将来必ずや位置できることを確信しました。さらに安全な免疫療法の確立ができれば、免疫療法は癌治療の中心を担え得る有力な手段であることを認識しました。私自身、この発展を続けている癌免疫の分野に身をおいたことを誇りに感じ、自分の研究している分子が将来、臨床に還元できることを期待しつつ、今後も研究を続けていきたいと改めて考えさせられました。最期まで自分らしい生活を送ることが期待でき、副作用なく、かつ癌治療効果のある治療をこの免疫療法は担えるはずだと、この免疫療法が癌の根治に必ずや繋がるはずだと感じました。