第4回SFCI総会に参加して

東京大学医科学研究所  高津聖志


 札幌での第4回SFCIに出席し、30年前の自分を思い起こしていた。恩師である故北川正保教授の特別講義を聞き、「自分自身の中に育ったがん細胞に、宿主はどのように免疫学的な対応するのか、免疫力を強化することにより癌を排除できるのか知りたい、排除したい」との意欲が強くわき、異常に興奮した。「がん免疫の研究により何かが新 しく期待できる、それに自分も参加したい」、との思いが強かった。今回も会議終了後大きな興奮に包まれた。今、何か大きなドラマのプロローグが始まりつつある、との思いである。がんの免疫学的な制御を目指し、大阪大学医学部癌研究施設腫瘍発生部門で4年間の大学院生活を送った。当時、腫瘍特異抗原や腫瘍特異移植抗原の分子レベルでの解析、癌細胞の異物化による免疫原性の増強の研究、担がん宿主での免疫抑制の研究などに深い興味を覚えた。学位論文は免疫制御の細胞性機構に関する研究でまとめたので、初期の自分の熱き息吹きとは違うものであった。アメリカ留学を終えて帰国した1970年代後半は、抗腫瘍免疫のエフェクター細胞がCTLかマクロファージか、Tヘルパー細胞も関与するのか、などの研究と結果の解釈に関する論議が盛んであった。また。単クローン抗体を用いた腫瘍抗原の解析、免疫賦活剤の抗腫瘍免疫強化作用やその臨床応用の研究も大きな話題であった。我々は結核菌免疫マウスをPPD修飾癌細胞で免疫し、がんの免疫治療の研究をした。興味ある結果も幾つか報告できたが、方法論的な限界と発想の転換の重要性を感じ、その後の追跡を中座してきた。1990年代に入り、株化T細胞の認識する抗原ペプチドの解析技術や遺伝子工学技術の進展に加え、何より「ヒトのがん増殖を免疫学的に制御したい」という研究者の強い熱意と地道な研究の継続により、複数の腫瘍抗原ペプチドが同定され、動物モデルでの解析とともに前臨床試験の経緯も討議の対象になってきた。今回のシンポジウムで、21世紀に向けて新しい研究の流れと結果に対する期待を感じた。その流れの中に自分も身をゆだねながら、今後のSFCIにおける討議と研究会の発展を祈りたい。